雛人形はだれが買うの?

2020年08月31日

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〇かつて雛人形は母方の実家が用意するものでした

女の子が生まれたご家庭では、初節句を控えて「春までにお雛さまを用意しないと」と考えていらっしゃることでしょう。どんな種類があるのか、どんな雛人形が人気なのか、情報収集をしながら検討を始めているパパやママも多いかもしれません。雛人形の知識を深めることはもちろん大切なことですが、もう一つ、本格的に雛人形選びを始める前に必ずおさえておいてほしいことがあります。それは「だれが雛人形を買うのか」ということです。

古くからの習わしでは、「節句人形は母方の実家が用意するもの」とされていました。これは昔ながらの結婚のスタイルに理由があります。結婚は「嫁入り」ともいわれるように、ほんの100年くらい前まで女性は男性の家に嫁として入り、嫁ぎ先の家族と同居するものでした。嫁入りした女性は、自由に実家と行き来することはできず、女性の両親も嫁ぎ先に気を遣って、なかなか会いに行けなかったといいます。最愛の娘に赤ちゃんが生まれたと聞いて、かわいい孫の顔をひと目見たいと考えた両親は、初節句のお祝いに雛人形を持っていくことを口実に、娘と孫に会いにいったのだそうです。

核家族化が進み、「嫁に行く」「嫁をもらう」という封建的な考え方が薄らいだいま、結婚した女性も自由に実家と行き来することができ、ご両親も娘や孫と自由に連絡をとりあえるようになりました。昔からのしきたりや風習に対して、柔軟に考える人も増えました。かつては母方の実家で用意した雛人形も、いまは必ずしもそうと決まっている訳ではなさそうです。いまの時代、雛人形を買っているのはだれなのか―つぎは、最近のお雛さま購入事情についてお話を進めましょう。

 

〇現代では「だれが買う」という決まりはありません

ひととえのショールームに訪れるご家族を見ていると、母方のご両親だけというケースはまずありません。若夫婦と一緒に母方のご両親が来られたり、母方ではなく父方のご両親が付き添われたり、あるいは若夫婦だけでいらっしゃることも少なくありません。女の子に贈るお人形ということもあってか、ママとお母さまだけでおみえになることもよくあります。ひととえのお雛さまは高島屋でもお取り扱いがありますが、こちらも店頭に訪れるご家族の構成はよく似ています。

また、ご両親が同行されるお客さまでも、雛人形選びの主導権は若いパパやママが握っているようにみえます。昔ながらの大きな段飾りを買う人は少なくなりましたし、ライフスタイルやインテリアにこだわりをもって暮らす若い世代が増えていることもあって、ご両親は時折アドバイスをする程度で、古い慣習を押し付けるような雰囲気ではありません。むしろ、いまどき人気のお雛さまを若夫婦と一緒に楽しんでいるようお見受けします。そして、ご両親が同行されるご家族は、購入の際にお支払いをご両親がすることが多いですね。若夫婦が選んで、ご両親が買う、というパターンです。

一方、若夫婦だけでおみえになるお客様は、パパとママでよく話し合いながらお雛さまを選んでいらっしゃいます。前もってカタログをご両親にお見せして、意見を聞いてきている方もいらっしゃいます。ご購入も自分たちでされますが、よく聞くとご両親から資金援助があるお客様も多いようです。必ずしも母方のご両親が資金援助をしているという訳ではなく、父方のご両親がサポートしている場合や、両家で折半している場合もあるようです。

一般的にみても、雛人形選びは若いパパやママが中心となり、実際に買うのは母方のご両親、父方のご両親、両家で折半、若夫婦と、それぞれのご家庭の事情によってさまざま。古い慣習は薄らいで、現代では「だれが買う」という決まりはなくなってきました。

とはいえ、地域によっては昔ながらの慣習を重んじるところもあります。どうしても自分たちが買って贈りたいとおっしゃるご両親もいるかもしれません。しかし、お互いに意思の疎通がないままに、気が付いたら大きな七段飾りが届いたり、両家の実家がそれぞれ用意していたりしたら大変です。パパママ世代に人気の高いモダンなお雛さまを買いたかったのに、イメージ違いのものをいただいても困りますよね。みんなが赤ちゃんの初節句を祝いたい一心でしてくれていることなのに、後悔ばかりが残っては元も子もありません。そうした失敗をしないためには、雛人形を選び始める前にそれぞれの実家と連絡をとりあい、時にはみんなで相談して、だれが選ぶのか、だれが買うのかを決めておくことをおすすめします。

 

〇祖父母の「お祝いしてあげたい」気持ちを大切に

若い世代はセンスもよく情報収集も上手ですから、娘のお雛さまは自分たちで選びたいと考えているパパやママは多いでしょう。自分たちで買うならば、だれにも気兼ねなくいまどき人気の雛人形が選べますが、もし実家のご両親が資金援助を申し出てくれた場合は、そうもいきません。「私たちのようなマンション暮らしにはコンパクトな雛人形が人気なんだけど、お父さんお母さんはどう思う?」とか「洋室に飾るからパステルカラーの雛人形にしたいんだけれど、どうかな?」というように、あらかじめ自分たちの希望をさりげなく伝えつつ、ご両親の思いにも耳を傾けてあげると理解を得やすいと思います。

昔ながらのやり方で、母方のご両親がお金を出し、父方のご両親も承知しているというのであれば、それに従ってよいのではないでしょうか。さまざまな事情で、その逆の場合もあり得ると思います。大変なのは、両家のご両親から申し出があり、お互いに譲らなかった場合です。慣習どおり、母方のご両親が買うことになったら、父方のご両親は寂しい思いをするに違いありません。そんなときはそれぞれの気持ちを汲んで、資金を折半してもらったり、お雛さまと一緒に飾る「つるし雛」や「名前旗」をオーダーしてみたりするとよいかもしれません。かわいい孫のために精一杯のお祝いをしてあげたいという気持ちがカタチとなれば、どちらのご両親もきっと満足されるはずです。お嬢さまが大きくなったときも、それぞれのおじいちゃんおばあちゃんから頂いたものなんだよ、とお話できますね。

雛人形に添える品として最も人気があるのは「つるし雛」です。縁起の良い小さな人形がにぎやかに吊られた雛飾りは、主役に負けない愛らしさで、雛人形をより華やかに演出してくれるに違いありません。

艶やかな旗飾りに名前を刺繍した「名前旗」も人気です。生年月日をお入れしたものは、命名札の代わりにもなり、雛まつりだけでなく誕生日や七五三にもお使いいただけます。出番が多いのでご両親もお喜びになるのではないでしょうか。

このほかにも、人形工房ひととえでは、平安絵巻を再現したような「百人一首」「雅楽」「貝合わせ」「嫁入り道具」の特選お道具をご用意しています。ふつうのお道具以上に手の込んだ特別なお道具は、まるで芸術品のように格調高い仕上がりで、それだけで飾っても存在感があり、インテリアとしても人気の高い商品です。お雛さまの時代の遊びや文化にふれる素晴らしい贈り物だと思います。「つるし雛」や「名前旗」とともに、オーダー候補としてみてはいかがでしょう。