雛人形はいつ飾ればいいの?

2020年09月03日

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〇「立春」から2月中頃までに飾るのがベストタイミング

 

雛まつりは由緒ある日本の伝統行事。雛人形を飾る時期についても、何か特別な決まりごとがあるのでは?と心配している人がいるかもしれません。一般的には、春の訪れを告げる「立春」から2月中頃までに飾るという目安があり、遅くとも雛まつりの1週間前くらいまでには飾るのが好ましいとされていますが、とくに「こうでなくてはならない」という決まりはありません。地域によっては旧暦で祝うところもありますし、お正月が明けるとすぐに雛人形を飾るところもあるようです。日本は昔から季節を先取りして楽しむ文化がありますから、早くお雛さまを飾って春を待ち遠しく過ごすのも、日本人らしい風情を感じますね。

 

ところで、雛人形を飾るタイミングとして好ましいとされる「立春」から2月中頃という目安は、何に基づいているのでしょうか。

2月初頭に「節分」とワンセットで訪れる「立春」は、二十四節気(にじゅうしせっき)の最初で、暦の上では春が始まる日とされています。二十四節気とは、太陽の一年の動きを24等分して季節の指標としたもの。必ずしも毎年同じ日にはなりません。立春は一年の起点に定められ、たとえば立春後に初めて吹く強い南風を「春一番」と呼びますし、茶摘みでお馴染みの「八十八夜」や台風が多い日とされる「二百十日」はも立春を起点に数えます。また「立春」の前日は「節分」です。「節分」は季節を分ける日のことで、古くは立夏・立秋・立冬の前日にも節分がありましたが、江戸時代以降は立春の前だけになりました。昔は季節の変わり目に邪気が生じると考えられていたため、節分の夜には厄祓いの追儺(ついな)行事がおこなわれました。「鬼やらい」ともいい、邪気を鬼に見立て、「摩滅(まめつ)」の意味から豆を投げて厄を祓ったのです。

3月3日の雛まつりは、春を寿ぐ行事でもあります。節分に豆まきをして家の中を清めてから春を迎え、雛人形を飾りつけて桃の節句の準備を始める―と順序立てて考えれば道理にもかなっており、気持ちのうえでもベストなタイミングといえそうですね。お日柄を選んで飾るという考え方もありますから、立春のあとの大安吉日であれば申し分ないでしょう。

 

ただし、昔から「一夜飾り」は縁起が悪いと伝えられています。お正月の「一夜飾り」がタブーであるのと同じく、大切な節句行事をきちんと準備しないで迎えようとすると、神様が怒って家から去ってしまうからなのだとか。お葬式の「一夜飾り」に通じることから、避けたほうがよいともいわれています。

いずれにせよ、雛まつりの前日に慌てて雛人形を飾るより、早めに飾って一日でも長くお子さんと華やいだ気分を楽しみたいものですね。

 

〇「雨水」に飾ると良縁に恵まれるという言い伝えもあります

 

雛人形を飾る時期については、「雨水(うすい)」に飾ると良縁に恵まれる、という言い伝えもあるようです。「雨水」は二十四節気のひとつで、立春の次にあたる二番目の節気です。立春から数えて15日目くらいとなる、2月19日頃にあたります。

 

「雨水」とは「降る雪が雨に代わり、氷が溶けて水になる」という意味。水がぬるみ草木が芽吹く頃を指し、昔は農作業の準備を始める目安とされていました。水は命を育むことから、水の神様は豊穣の神様でもあり、子宝や安産の神様として崇める地域もあることから、女の子の良縁につながっていったのでしょう。かつては良い伴侶に出会い子宝に恵まれるという意味合いが強かったかもしれませんが、現代的ではさまざまな場面で巡り合う人や出来事も含めて、良いご縁を結ぶことと解釈するほうがしっくりくるかもしれません。

 

「雨水」の期間は2月下旬となるため、新暦で雛まつりをおこなう地域ではやや遅めです。しかし、うっかり飾る時期を逃してしまったと慌てている人にとっては、有難い言い伝えですね。雨水のあとの天気の良い日を見計らって雛人形を飾りましょう。初節句で雛人形を買ったものの、購入のタイミングが遅く配送が2月末になってしまったご家庭も、考え方ひとつでポジティブにとらえれば、喜ばしい気持ちで初節句を迎えられるのではないでしょうか。

 

人形工房ひととえでは、雛まつりが押し迫った2月下旬でも雛人形のご購入が可能です。もし買いそびれてしまってお困りの方も、ぜひご相談ください。できる限り迅速な手配でお雛さまをお送りします。お嬢さまにとってたった一度の初節句が家族の楽しい思い出になるよう、お手伝いをさせていただきます。

 

〇片付けは湿気の少ないお天気のよい日を選んで

 

では、雛人形をしまう時期はどうでしょう。「雛人形を片付けるのが遅いと婚期が遅れる」とよくいわれますが、これはただの俗説。「片付けもできないようでは、きちんとした女性になれず、お嫁にもいけませんよ」という戒めを込めたしつけの一環と考えられます。「お節句のような年中行事を忘れずにおこない、後片付けもきちんとする娘さんなら、きっとよい花嫁になりますね」ということなのでしょう。

 

雛人形をしまうのに好ましいのは「啓蟄(けいちつ)」の日といわれています。「立春」や「雨水」と同じく、「啓蟄」も二十四節気のひとつ。だいたい3月6日頃にあたります。雛まつりが終わったら早めに片づけるという意味では、ちょうどよいタイミングかもしれませんね。一般的には、雛まつりが済んでから2週間くらいの間にしまうのがよいといわれています。旧暦に雛まつりをおこなうところも、終わってから2週間くらいを目安に片付けるとよいでしょう。とくに大安吉日を選ぶ必要はありません。

 

雛人形の片付けるタイミングは、日付やお日柄よりもむしろ、お天気のほうが重要です。雛人形は湿気に弱いため、片づける前に湿気を飛ばしてからホコリを払って片付けないと、カビやシミで大切なお雛さまを傷めてしまうからです。雛まつりが終わったら、お天気とよく相談しながら、晴れて空気が乾燥している日を選ぶようにしましょう。

 

〇雛人形を飾るときに忘れないでほしいこと

最後に、雛人形の飾るときに、気をつけておきたいことを2つ、お話します。

ひとつは、上手なしまい方につながるワンポイントアドバイス。

お雛さまにはお人形のほかにも小物やお道具が多く、収納されている箱も大小さまざま。一度出してしまったら、どこに何が入っていたか、わからなくなってしまいます。上手に片づけるには、「入っていた箱に戻す」が基本。飾るときにどの箱に何が入っていたかを写真で撮ったり、付箋にメモして貼っておいたりしておくと、混乱や間違いがなく片付けがはかどります。

 

もうひとつは、飾っている間のアクシデント予防。

お子さんが小さいときは、雛人形を飾る場所にも気を付けてください。ハイハイやよちよち歩きのお子さんは、何にでも興味をもって手を伸ばしたり口に入れたりする時期。雛人形に付属する小物やお道具でケガをしてしまったら大変です。お雛さまはお子さんの手の届かない安定した場所に飾るなど、アクシデントを未然に防ぐ工夫をお願いします。