随身・仕丁を加えた十五人飾りの雛人形をコンパクトに飾ろう

2020年10月15日

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〇随身は宮廷警固にあたるシークレットポリス

段飾りの雛人形で五人囃子の下にくるのは、2人の随身です。随身のさらにもう一段下に飾るのは、仕丁の3人です。五人囃子まで含めた「十人飾り」に、随身と仕丁の5人を加えて「十五人飾り」といいます。戦前までは十五人を超えるお雛さまもよく見られましたが、現代ではこの十五人をフルセットとして「きまりもの」と呼んでいます。

随身は、身分の高い人が外出するときに警護にあたる近衛府の役人です。現代風に言えば、要人警護のSP(シークレットポリス)といったところでしょうか。「左大臣・右大臣」と呼ばれることもありますが、左大臣・右大臣は朝廷の高官ですので、この呼び方は正しくないと考えるのがよさそうです。近衛府とは宮中の警固や行幸(天皇の外出)の警備にあたった官職で、左近衛府と右近衛府が内裏の東西にありました。雛人形の随身も左右に二人いますので、帝である男雛からみて左(向かって右)に左近衛府の武官が、右(向かって左)に右近衛府の武官が警固にあたっていると考えられそうです。

衣裳は動きやすい武官装束で、脇のあいた闕腋袍(けってきのほう)を着用しています。これは男雛が脇を閉じた縫腋袍(ほうてきのほう)を着用しているのと大きく違うところです。右手には二本の矢を持ち、背後には背負い矢が見えます。腰には刀をさしていますが、これは儀式の際に装飾的にさす「儀仗(ぎじょう)の剣」といいます。矢を持つことから「矢大臣」と呼ばれることもあります。

〇宮廷の雑務にあたる仕丁は表情も豊か

随身の下に飾る仕丁は、宮中の雑用係です。彼らは3年交代で地方から集められた庶民たちでした。雛人形の仕丁は3人で、関東雛では向かって右から立傘(たてがさ)・沓台(くつだい)・台傘(だいがさ)を手に持っています。立傘は雨傘、台傘は日傘。帝のお出かけに備えているのです。京雛では、向かって右から箒(ほうき)・ちりとり・熊手を持ちます。これは庭掃除の支度ですね。広大な庭園の手入れをしていたのでしょう。
よく見ると、仕丁の顔は3人とも表情が違います。雛人形のなかで唯一庶民である仕丁は、すまし顔の貴族と違って喜怒哀楽の感情表現も豊かだったに違いありません。それぞれの表情から、笑い上戸・怒り上戸・泣き上戸とも呼ばれています。

仕丁の左右には「左近の桜」と「右近の橘」を置きます。左右は天皇である帝から見ての方向で、向かって右側に「左近の桜」を右側に「右近の橘」を配置します。左近・右近の名は、紫宸殿の東西に左近衛府・右近衛府が陣をしいていたため。近衛府には宮中警固にあたる兵たちが控えていました。
そもそも、平安京遷都の際に、天皇が住む紫宸殿には魔除けの木花として梅と橘の木が植えられていたのだとか。のちに梅が枯死すると、代わりに桜が植えられたのだそうです。1200年の間、桜橘は幾度となく植え替えられ、現在の京都御所にも紫宸殿の前に「左近の桜」と「右近の橘」が枝を広げ、四季折々の美しい姿を見せています。

〇十五人飾りをコンパクトに飾る木目込み雛人形

親王・三人官女・五人囃子までが登場するお雛さまの結婚式の物語は、随身と仕丁が加わることでさらに広がりを見せます。結婚式の主役に、ご馳走を運ぶ給仕役、場を盛り上げる音楽奏者に、会場の周囲には警備員や雑用係まで登場して、晴れの日の饗宴を滞りなく執りおこなうためにサポートしています。しあわせな結婚と不自由のない暮らしに憧れた人々の想像力は、雛人形によってこんなにも豊かに表現されていることに、あらためて感動しますね。
そんなお雛さまの物語を知ると、やっぱりフルセットの十五人飾りを飾って、日本の伝統文化を子どもたちにも伝えたいと思う方も多いことでしょう。しかし、そこで問題となるのは住宅事情。大きな一軒家であればともかく、マンション暮らしでは大きな七段飾りを置くスペースなどありません。

そこで昨今人気を集めているのが、コンパクトな雛人形です。通常の大きさの雛人形を親王飾りでシンプルに置くのも省スペースのためのひとつのアイディアですが、フルセットの十五人飾りを飾るのであれば、コンパクトな雛人形を選ぶしかありません。おすすめは、小さくてころんと丸いフォルムが愛らしい木目込み雛人形です。
たとえば、人形工房ひととえの木目込み雛人形ならば、五段の十五人飾で横幅480×奥行450×高さ330~350㎜。おしゃれなデザインの二段半月飾り台の十五人飾でも、横幅540×奥行450×高さ205㎜。どちらも一般的なリビングチェストに余裕をもって置けるコンパクトサイズです。一般的な衣裳着人形であれば、同じスペースに親王飾りしか置けないでしょう。少し小ぶりの衣裳着人形を選んだとしても、五人飾りまでが限界ではないでしょうか。

木目込み雛人形は、コンパクトだからといって手がかかっていない訳ではありません。伝統的な製法にこだわる職人たちにとって、小さいということはむしろより難易度が上がる仕事。高度な技術が必要です。人形工房ひととえは、江戸時代から受け継ぐ伝統技術や自然の素材にこだわりながら、現代の暮らしにあったコンパクトな木目込み雛人形をおつくりしています。小ぶりの雛人形にあわせて、小さくてかわいらしいお道具もバリエーション豊か。豊富なセットをご用意するとともに、お好みの雛人形とお道具を自由に組み合わせることができるカスタマイズも可能です。世界でただひとつ、センスが光るコンパクトな十五人飾りをコーディネートしてみませんか。オンラインショップには、スマホやパソコンでカスタマイズが楽しめる「WEB de カスタマイズ」も体験できます。ぜひご覧ください。