五人囃子が加わった十人飾りで雛人形ワールドをおしゃれに楽しもう

2020年10月13日

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〇五人囃子は能楽を奏でる宮中の少年楽団

男雛女雛と三人官女の「五人飾り」に、五人囃子が加わった雛人形を「十人飾り」といいます。五人囃子の「囃子」とは、能や歌舞伎など日本の各種芸能でおこなわれる芝居・踊り・歌にあわせて、伴奏や効果音として奏でられる音楽のこと。おもに打楽器と管楽器で演奏します。

雛人形の五人囃子が奏でるのは能楽。14~15世紀にかけて、観阿弥(かんあみ)・世阿弥(ぜあみ)によって確立された日本の古典芸能です。能楽は演劇・舞・音楽によって成り立つ総合芸術で、その音楽は「囃子方(はやしかた)」と「謡(うたい)」によって奏でられます。「囃子方」は器楽奏者で、奏でる楽器は笛(ふえ)・小鼓(こつづみ)・大鼓(おおかわ・おおつづみ)・太鼓(たいこ)の4種類。そこに声楽担当の「謡」が入って、五人囃子を構成しているというわけです。

彼らの出で立ちに注目すると、五人囃子はみなかわいらしい “おかっぱ頭” であることに気付くでしょう。これは、彼らが元服(げんぷく)前の少年たちであることを物語っています。元服とは男子の成人式で、昔は11~16歳くらいの間におこなわれ、髪を結い、服装を改め、初めて冠を付けるなどの儀式をおこなうものです。
つまり、五人囃子は貴族の子弟によって構成された宮中の少年楽団といったところでしょうか。帝の結婚式というまたとない晴れ舞台で演奏を披露するのですから、前途有望なエリート集団だといえるでしょう。

〇五人囃子が手に持つ楽器・小道具と役割

五人囃子は、能楽を上演するときの囃子方4人と謡1人で構成されています。向かって右から、謡、笛、小鼓、大鼓、太鼓と並びます。これは実際の能舞台における囃子方・謡の座る位置とも同じです。能舞台では、演技が披露される本舞台の右側に謡座(うたいざ)があり、囃子方は本舞台後方の「後座(あとざ)」に、五人囃子と同じ順番で並びます。

謡(うたい)
能楽の声楽部分を担当しています。今どきの音楽バンドでいえば、メインボーカルですね。向かって一番右側の上座に座り、手には扇を持っています。朗々と謡い上げる声が、饗宴に花を添えたに違いありません。

笛(ふえ)
謡の左に並んで座るのが笛です。唯一のメロディー楽器である竹製の横笛で、「能管(のうかん)」とも呼ばれます。晴れの日を寿ぐ澄んだ高音の調べが、紫宸殿に響いたことでしょう。

小鼓(こつづみ)
日本の伝統的な打楽器。調緒(しらべお)という紐を左手に握って右肩にのせ、右手の指先で打ち鳴らします。調緒を絞り、音を調整します。五人の真ん中に位置し、床几(しょうぎ)という折り畳み椅子に座って演奏します。

大鼓(おおかわ・おおつづみ)
小鼓と同じ構造の打楽器で、小鼓よりひとまわり大きな鼓です。小鼓と同じように床几に座り、左手に持った大鼓を左膝に置き、右手の指先で打ち鳴らします。向かって小鼓の左側に配置します。

太鼓(たいこ)
いわゆる締太鼓のことで、構造は鼓と変わりありません。向かって一番左に座り、台に置いた太鼓を両手に持ったバチで叩きます。能楽のリズムを主導する役割を担っています。

童謡『うれしいひなまつり』で「五人囃子の笛太鼓~」と歌われるように、雛人形では能楽を奏でる五人囃子が主流です。しかし、公家の文化が根強く残る京都では、五人囃子の代わりに雅楽を演奏する「五楽人」を飾ることも。この時の並びは、向かって右から鞨鼓(かっこ)・笙(しょう)・火焔太鼓(かえんだいこ)・篳篥(ひちりき)・横笛となります。さらに、琵琶(びわ)と筝(そう)を加えて「七楽人」とすることもあります。

雅楽は能楽よりも歴史が古く、仏教とともに大陸から伝来。日本の古典音楽として1200年もの間、宮廷や寺社で演奏され、現代まで伝承されてきました。楽器はどれも異国情緒あふれる形状をしており、見た目もおしゃれな雰囲気です。人形工房ひととえの特選お道具には、精巧に作られた雅楽器を3サイズでご用意しています。雛人形のお道具として嫁入り道具などと一緒に飾っても素敵ですが、オブジェとして雅楽器だけでショーケースに飾り付けるのもおしゃれ。季節を問わないインテリアとしても楽しめ、日本のお土産として外国の方にも喜ばれます。

〇十人飾りをドールハウスのようにおしゃれに飾る

雛人形の主役である男雛と女雛、かいがいしく世話を焼く三人官女に、BGMを奏でる五人囃子が加わると、雛人形ワールドも一気に具体化していきます。雛人形の登場人物が増えていくことで、帝の婚礼シーンを再現するだけでなく、当時の宮廷生活や人間模様にも思いを巡らすことができ、なんだかワクワクしてきますね。

そんな雛人形の世界観を、まるでドールハウスのよう自由にディスプレイするおしゃれな飾り方も注目されるようになってきました。男雛と女雛が語り合うように向かい合わせに並べてみたり、五人囃子の演奏を楽しむように他の人形たちで五人囃子を取り囲んだりと、そこに何か物語があるような飾り方。まるで平安時代の幼い姫君が楽しんだ「ひいな遊び」のように、ロマンチックなストーリーを感じさせるディスプレイ。昔ながらの段飾りのように決まった順番でお行儀よく並べるのも情緒がありますが、全く新しい感性で自由にレイアウトしてみるのも、なかなかおしゃれで楽しいものです。

人形工房ひととえの十人飾りには、春の宴をリアルに再現した「ジオラマシリーズ 花」があります。宮中の庭園を流れる小川に沿って集うお雛さまは、宮廷生活の一場面を切り取ってガラスケースに閉じ込めたよう。「曲水の宴」では、錦鯉が泳ぐ池を中心に天然石を配したリアルな日本庭園が再現され、白砂利の上には御所車が置かれています。「貝合わせ」では、いにしえの宮廷生活に心をいざなう御所車と貝合わせに、愛らしい白うさぎの高坏をプラスして、優雅でかわいらしい “ひととえワールド” が繰り広げられています。
ほかにも大きな半月型の平台に雛人形やお道具を自由にレイアウトしたり、ユニークな工夫が詰まった収納飾り台に飾り付けたりと、アイディアは無限。ひととえは、さまざまなスタイルのおしゃれな雛人形をご提案しています。皆さんも伝統のお雛さまを現代の感性で、もっとモダンに、もっとおしゃれに飾ってみてはいかがでしょう。