お雛様はどこに飾りつけるといいの?

2020年09月04日

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〇家族みんなが見て楽しめる場所に飾りましょう

お雛さまを買うとき、まず考えたいのは「飾る場所」です。飾る場所を確保しなければ、どんなサイズのお雛さまを買えばいいか、わからないからです。雛人形を飾る場所に、とくに決まりごとはありませんが、おすすめの場所やNGの場所はあります。それぞれのお住まいによって適した場所は異なりますので、皆さんの家ではどこが候補になるか、考えるためのポイントをお話しましょう。

生まれてきた女の子の健康としあわせを願うお雛さまには、家族みんなの思いが詰まっています。そんな雛人形の最大の使命は、女の子を見守ること。女の子にふりかかる災いを身代わりとして祓うことです。小さい子が手を触れないようにと、奥まった部屋に飾る人もいますが、それでは女の子を見守ることはできません。お子さんはもちろん、家族みんなが毎日お雛さまのお顔を見て楽しめる場所に飾り付けるようにしましょう。

昔ながらの日本家屋ならば、お祝いなどで人が集まる広いお座敷があり、その上座には床の間がありました。床の間は家の中心であり、和室の最もよい場所につくられています。そういうお宅では、昔からきっと床の間の前にお雛さまを飾り付けたことでしょう。

しかし核家族化が進んだいま、若い夫婦はマンションやアパートに住むことが増えました。和室がない家も多く、あっても床の間がない和室がほとんどです。そのような場合は、家族が集まるリビングに飾ることをおすすめします。サイドボードやピアノの上に置いてもよいでしょうし、この時期だけ折り畳みのテーブルを出して飾り付けてもよいでしょう。玄関に飾り棚があれば、そこでもよいかもしれません。出入りに必ず家族の目にふれ、来客にも見てもらえるからです。キッチンカウンターにコンパクトなお雛さまを飾り付けるという手もありますが、台所に近いため水や油から守る工夫が必要です。和室に置けそうな場合は、床置きするのか、台や棚を用意するのか、考えどころです。もし寝室として使っている和室ならば、布団から出るホコリが立ちやすく、こまめにホコリを払う必要が出てきます。

〇お雛さまは直射日光と高温多湿がキライ!

お雛さまを飾る場所に決まりはありませんが、絶対に避けてほしい場所があります。
まず、日当たりのよい部屋では、直射日光にあたらないように気を付けましょう。紫外線は衣裳の色あせの原因となります。露出したお顔や手の劣化も進み、お道具も傷みが早くなります。できれば窓から少し離れた場所に飾り付けるのが好ましいでしょう。出窓に置きたいと考えている方がいるかもしれませんが、遮光カーテンを引くなど直射日光が当たらない工夫をしない限り、避けたほうがよいかもしれません。

カビやシミの原因となる湿気は、お雛さまの天敵です。高温多湿の場所は雛人形を飾る場所としてふさわしくありません。雛人形を飾るこの時期は空気が乾燥しがちですが、局所的に高温や多湿になる場所があります。たとえば、結露しやすい部屋の窓辺は、サッシやカーテンにカビが生えるほど湿度が高いので要注意。ストーブや加湿器のそばも、局所的に高温多湿の状態をつくりますので、お雛さまから遠ざけて置くようにしましょう。玄関の飾り棚はよいスペースですが、湿気がこもりやすい場所でもあります。雨や雪で濡れた傘や靴はよく乾かしてからしまったり、こまめに換気をして湿気を逃したりしましょう。

逆に、極度に乾燥した場所もお雛さまは苦手です。暦の上では春でも、雛人形を飾る2~3月はまだ寒い時期。暖房をお使いの家が多いことでしょう。エアコンやヒーターの温風が直接当たる場所は、人でも乾燥で肌荒れしやすく注意が必要ですが、それはお雛さまも一緒です。雛人形の肌は胡粉(ごふん)といって貝殻を砕いた粉でつくる白色絵具を塗りますが、乾燥しすぎるとひび割れたり剥がれたりすることも。暖房器具の置き場所にも、ぜひ気を付けてください。

また、お雛さまはホコリも嫌います。人が集まる場所はどうしてもホコリが立ちやすいのですが、これを放置するとホコリが湿気を含んで、雛人形のお顔や髪や衣裳に張り付いてしまいます。もし、このまま片付けてしまうと、カビやシミ、虫食いの原因になります。お雛さまの美しい姿をいつまでも楽しめるように、ホコリはこまめに毛ばたきなどで払ってあげましょう。

〇雛人形を飾るのに縁起のいい方角ってあるの?

お雛さまを飾る方角には、とくに決まりはありません。「北向きは縁起が悪い」という説もあるようでうすが、どうしても気になるようでしたら、神棚と同じ東向きか南向きにするとよいでしょう。東向きをよしとするのは、太陽が昇ってくる方角であり、これにより一日が始まることから明るく勢いがあると考えられているから。一方、南向きをよしとするのは、太陽の通り道であり一日中明るいからです。いずれも、万物を生育させる「陽の光」が十分に当たる方角といえるでしょう。

「お雛さまは南向きに置くのがよい」といわれることもあります。これは古代中国の「天子南面す」という言葉に由来し、「天下を治める者は、北に背を向け、南を向いて座る」ことを意味しています。天の星は北極星を中心に回転しているため、世界の中心と考えられた天子は北極星の位置で世の中を見渡すと考えられていたのですね。よって、中国の皇帝も、日本の天皇も、かつては北極星を背にして南向きに座っていたわけです。
雛飾りはかつて帝が暮らした京都御所の紫宸殿(ししんでん)をモデルにしています。お内裏さまは天皇と皇后で、天皇の結婚式を模したものです。そんなところからも、実際の天皇と同じように南向きで飾り付けるのがよいとされたのかもしれません。

しかし、現在では飾る向きはさほど重要な問題ではありません。先にお話したように、家族が集まり女の子を見守れる場所、直射日光が当たらず、湿気がこもらない場所を優先して決めるのがよいでしょう。

〇小さな子どもがケガをしないように置き場所にも注意

最後に、雛人形の飾るときに、気をつけておきたいことを2つ、お話します。

ひとつは、上手なしまい方につながるワンポイントアドバイス。
お雛さまにはお人形のほかにも小物やお道具が多く、収納されている箱も大小さまざま。一度出してしまったら、どこに何が入っていたか、わからなくなってしまいます。上手に片づけるには、「入っていた箱に戻す」が基本。飾るときにどの箱に何が入っていたかを写真で撮ったり、付箋にメモして貼っておいたりしておくと、混乱や間違いがなく片付けがはかどります。

もうひとつは、飾っている間のアクシデント予防。
お子さんが小さいときは、雛人形を飾る場所にも気を付けてください。ハイハイやよちよち歩きのお子さんは、何にでも興味をもって手を伸ばしたり口に入れたりする時期。雛人形に付属する小物やお道具でケガをしてしまったら大変です。お雛さまはお子さんの手の届かない安定した場所に飾るなど、アクシデントを未然に防ぐ工夫をお願いします。